「コールセンターのKPIはどういう指標を設定するの?」
「KPIを設定して評価する重要性を知りたい」
KPIとは、重要業績評価指標のことです。一般的には、最終目標達成のための中間目標としての意味合いがあり、課題によってKPIに設定する項目も変わってきます。
コールセンターの業務でも、KPIの設定は欠かせません。
そこで本記事では、コールセンターのKPI15項目と設定するときのポイントを紹介します。コールセンターのKPIの設定について悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
この記事の内容
コールセンターのKPIとは重要業績評価指標のこと
コールセンターのKPIとは、重要業績評価指数のことです。設定した目標を達成するための指標として用いられます。
KPIを測定することで、コールセンターの業績などを評価でき、最終目標を達成するための改善点を明確にできます。
いきなりゴールを目指そうとしても、途中経過がなければ、ビジョンや見通しは立てられません。
最終目標を達成するまでの過程で、中間目標としてKPIを適宜設定し、ひとつずつ達成できれば最終目標に近づけるとイメージするといいでしょう。
コールセンターによって目標や課題は異なります。具体的には、顧客満足度の向上やクレーム発生の減少などが挙げられます。
コールセンターにおけるKPI測定の重要性
ここでは、コールセンターにおけるKPI測定の重要性を3つ紹介します。
- 現状の把握ができる
- 数値での目標設定ができる
- 課題の解決につながる
現状の把握ができる
コールセンターでKPIを測定することで現状の把握ができます。
KPIは、現状を具体的な数値で示します。
例えば、平均応答時間や顧客満足度などの指標は、日々の業務の質を把握するうえで非常に有効です。現状の把握は、効率的な運営や方針の決定において重要な情報となります。
数値での目標設定ができる
数値での目標設定ができることも、コールセンターにおいてKPIを設定する大きな意味合いがあります。
最終的な目標があっても現状を正確に把握し、目標達成できる道筋がなければ成長は難しいでしょう。
例えば「クレーム発生を減少させる」という目標を立てたとします。この目標では、どれくらい改善すれば目標達成と評価できるのか、具体的にどのように改善していくのかなどわかりにません。
そのため、具体的な数値目標ができると、全体の方向性が明確になり、計画を立てやすくなります。「応答速度の平均を3秒短縮する」や「顧客満足度を10%向上させる」など、数値を示すことで目標が明確となります。
さらに、チームのモチベーションが上がり、結果的にサービスの質が向上します。数値での目標設定は、明確な方向性を示せるでしょう。
課題の解決につながる
KPIの測定は、課題の解決にもつながります。
例えば、離脱率が高い場合、待機時間の長さに問題があるのか、応対に問題があるのかなど課題の可能性を示唆します。問題によって対策が変わってきます。
さまざまなKPIを指標とし、具体的な問題解決策を検討できます。課題を数値化し、問題解決に向けて対策を取ることで、サービスの改善や顧客満足度の向上が期待できるでしょう。
コールセンターのKPI|応対品質は5項目
次に、コールセンターにおけるKPIの応対品質項目を5つ紹介します。
- 応答率
- 放棄呼率
- 平均応答速度(ASA)
- サービスレベル(SL)
- 話中率
応答率
応答率は、すべての通話で実際にオペレーターが応答した通話件数の割合を示します。「応答件数÷総着信件数×100」で求められます。
高い応答率であれば、顧客からの問い合わせに適切に対応していることを示します。一方で、低い応答率であれば、顧客の応対が不適切な可能性があります。
オペレーター数が不足していることやひとり当たりの対応件数が低下している可能性があります。
株式会社リックテレコムの調査によると、実際の現場で重要視されているKPIは下記の通りです。
- 放棄呼率(応答率):45%
- 顧客満足度:19%
- オペレーターのモニタリングに基づく対応品質:12%
上位3位までの紹介ですが、応答率の重要性がわかるでしょう。これは、応答率は顧客満足度向上に影響するためと考えられます。
放棄呼率
放棄呼率は、すべての通話に対して、オペレーターが応答できなかった通話件数の割合を示します。応答率と放棄呼率は、相関関係にあります。「放棄呼件数÷総着信件数×100」で求められます。
通話の応答速度やサービスの品質を評価することが重要です。高い放棄通話率であれば、顧客が長時間待たされる可能性、あるいはサービスが期待に応えていない可能性があります。
平均応答速度(ASA)
平均応答速度は、顧客がオペレーターと通話できるまでの平均時間です。つまり、「オペレーターの応対を受けるまで、顧客はどれくらい待ったのか」という指標となります。
「つながった件数の待ち時間÷つながった件数」で求められます。
株式会社リックテレコムの調査によると、多くは10秒台以下の範囲で対応しており、76%以上は20秒以内で対応していることが明らかとなりました。
サービスの即時性と効率性を評価するための指標であり、平均応答速度が改善すると顧客の満足度を高められます。
サービスレベル(SL)
サービスレベルは、特定の時間内に応答できる通話の割合を示します。一般的には20秒以内を特定の時間内として定めています。つまり、応答率と同様に、つながりやすさを示すKPIです。「特定の時間内に応答した件数÷着信件数」で求められます。
高いサービスレベルは、顧客からの問い合わせに迅速に対応しているといえるでしょう。
話中率
話中率は、顧客が電話をかけたにもかかわらず、つながらずに通話中となってしまった着信の割合を示します。「話し中になった件数÷総着信件数」で求められます。
オペレーターの稼働効率を示す重要な指標です。話中率が高ければ、体制が不十分な可能性があります。ピーク時とオフピーク時の話中率を比較することで、より効率的なシフト作成が可能となるでしょう。
コールセンターのKPI|生産品質は6項目
ここでは、コールセンターにおけるKPIの生産品質項目を6つ紹介します。
- 稼働率
- 平均処理時間(AHT)
- 平均通話時間(ATT)
- 平均保留時間(AWT)
- 平均後処理時間(ACW)
- コスト・バー・コール(CPC)
稼働率
稼働率は、オペレーターが業務時間内でどれだけ通話に時間を当てられたかを表す指標です。(通話時間+後処理時間+その他業務の時間)÷(勤務時間−離席時間)で求められます。
着信件数に対して、オペレーターの人員が適切であるかを判断できます。高い稼働率であれば、オペレータが十分に活用されていることを示しますが、低い稼働率であればオペレーターの疲労やミスの発生などを考えなければなりません。
低い稼働率が続けば、応対品質の低下や顧客満足度の低下につながる可能性があります。
平均処理時間(AHT)
平均処理時間は、1件の通話に対応するためにかかった時間を表す指標です。
平均処理時間は、(総通話時間+総後処理時間+総保留時間)÷ 総呼応件数で求められます。
1件の通話に対応するためには、通話だけではなく、通話に関連するすべての活動、例えば、後処理やデータ入力などを行わなければなりません。
平均処理時間が長すぎると、多くの時間を通話以外の活動に費やしている可能性があります。短縮できれば、オペレーターのひとりあたりの応答件数が増加します。
しかし、時間の短縮ばかり考えていると顧客満足度の低下につながるため注意しなければなりません。
平均通話時間(ATT)
平均通話時間は、1件の通話に要する通話時間の平均を表す指標です。「総呼応件数 ÷ 総通話時間」で求められます。
オペレーターが顧客の問題や質問を解決するのにどれだけ効率的であるかを測定します。適切な平均通話時間の設定は、顧客満足度とオペレーターの効率性をともに維持するために重要な指標です。
平均保留時間(AWT)
平均保留時間は、1件あたりの保留時間を表す指標です。「総保留時間÷総処理件数」で求められます。
平均保留時間が長いと分かれば、その分顧客の時間を奪っているといえます。長時間待たせてしまった相手にはストレスがかかるでしょう。
電話業務において、相手を長時間待たせてはいけません。
また、平均保留時間を短くできれば、その分顧客からの通話にもより多く対応できます。顧客満足度の向上につながるだけではなく、コストの削減にもつながるでしょう。
平均後処理時間(ACW)
平均後処理時間は、1件の通話あたりに要する後処理の時間のことを表す指標です。「合計後処理時間 ÷ 総呼応件数」で求められます。
オペレーターは、顧客との通話だけが業務ではありません。データ入力やメモの作成などの業務を実施しなければなりません。それに時間がかかります。
平均後処理時間が長ければ、後処理に多くの時間を費やしているという点で問題があるかもしれません。
コスト・パー・コール(CPC)
コスト・パー・コールは、1件の通話あたりに要するコストを示す指標です。「通話処理件数÷全経費」で求められます。
これには人件費や設備費など運営費が含まれ、低く抑えることで費用対効果を達成できる可能性があります。
コールセンターのKPI|顧客満足度は2項目
そして、コールセンターにおけるKPIの顧客満足度の項目を2つ紹介します。
- 顧客満足度(CS)
- 顧客推奨度(NPS)
顧客満足度(CS)
顧客満足度は、顧客がサービスや製品にどれだけ満足したかを測定するための指標です。
顧客に直接アンケート調査を実施することで、お客様の声を分析し改善すべきポイントなどを把握します。
顧客がサービスの質や応答時間、オペレーターの専門性など、様々な要素にどれだけ満足しているかを示せます。
顧客推奨度(NPS)
顧客推奨度は、顧客が友人や同僚に対して企業のサービスや製品を推奨する確率を測定するための指標です。(推奨者-非推奨者)÷全体数で求められます。
顧客ロイヤリティを評価する指標であり、「0点(全く推奨しない)」から「10点(非常に推奨する)」までで、顧客はどれくらい推奨するのかを評価します。
- 9~10点:推奨者(プロモーター)
- 7~8点:中立者(パッシブ)
- 0~6点:批判者(デストラクター)
スコアが低ければ、ブランドやサービスに対して否定的な意見を持っている可能性があります。一方で、スコアが高ければブランドやサービスの熱心な支持者であることを意味するでしょう。
コールセンターのKPI|従業員マネジメントは2項目
さらに、コールセンターにおけるKPIの従業員マネジメント項目を2つ紹介します。
- 欠勤率
- 離職率
欠勤率
欠勤率は、従業員が割り当てられた、もしくはスケジュールされた勤務予定の日数に対して、欠勤となった日数の割合を示す指標です。
欠勤率が高いと、従業員の健康的な問題やモチベーションの低下、または職場環境の問題に発展する恐れがあります。しかし、これらは要因の特定は難しいため、数値の目標を立てにくいでしょう。
適切な支援やトレーニング、十分な休養を提供することで、欠勤率を低下できるように企業は努めなければなりません。
離職率
離職率は、在籍人数に対する離職者の割合を示す指標です。
高い離職率であれば、従業員が不満を抱え、新しい職場を求めた可能性があります。
すぐに改善しなければ、在籍している従業員に負担がかかり続け離職者が増え、さらに負担が増加するなど悪循環に陥るでしょう。
コールセンターのKPIを設定する5つのポイント
では最後に、コールセンターのKPIを設定するポイントを5つ紹介します。
- 自社の業務や目的に合わせる
- 目標に適したロジックツリーを作成する
- 現実的に達成可能な目標を設定する
- KPIは定期的に見直す
- 設定だけでなく分析や改善も行う
自社の業務や目的に合わせる
自社の業務や目的に合わせることが、KPIを設定するうえで重要です。
一般的かつありきたりなKPIだけでは、従業員のモチベーションにつながりません。企業が同じ方向を向いて取り組みにくいため、目標を達成することは困難になります。
自社に合ったKPIの設定であれば、より本質的な業績評価ができるでしょう。
目標に適したロジックツリーを作成する
KPIの設定にあたっては、目標を明確にしてロジックツリーの作成が効果的です。
ロジックツリーとは、問題や原因などを細かく洗い出し、ツリー上に書くことで解決方法を導き出すフレームワークです。
問題や原因と結果の関係を示す構造となっているため、目標達成のための行動や計画、目標の優先順位を確認しやすいです。
また、KPIごとの目標をどのように設定すれば最終目標にたどり着けるか明確になります。
現実的に達成可能な目標を設定する
KPIを設定する際は、理想的な目標を選ぶのは避けてください。現実的な目標を設定しましょう。
従業員のモチベーションを考慮しつつ、業績の進捗を適切に評価できます。目標が高すぎるとモチベーション低下につながります。一方で、低すぎると組織の成長を妨げる可能性があります。
KPIは定期的に見直す
KPIは、一度設定したら終わりではなく、定期的に見直さなければなりません。
なぜなら、業界のトレンドやコールセンターの環境は常に変化しているからです。そのため、一度設定したKPIをずっと同じままにしておくのは適切ではありません。
定期的な見直しをすることで、現状に適したKPIを設定できるため、業績の適切な評価と向上に取り組めるでしょう。
設定だけでなく分析や改善も行う
設定したKPIに基づくデータを収集し、分析や改善をすることが大切です。
計画に沿って実践していく中で、新たな目標を設定し、再度取り組みます。改善を継続的に行うことで、業績の向上を実現できるでしょう。
まとめ:コールセンターでKPIを設定して目標達成を実現させよう
コールセンターにおいて、KPIの設定は欠かせません。適切なKPIを設定し、繰り返し評価や改善をすることで、コールセンターの課題や問題など現状を把握できます。
また、数値化された目標であれば、従業員のモチベーションは向上し、同じ方向を向いて取り組めるでしょう。
現状に合ったKPIを設定し、目標達成を実現しましょう。