「IVRとはどのようなシステムのこと?」
「コールセンターでIVRを取り入れて得られる効果が知りたい
IVRとは、顧客や取引先からの着信に対して案内を出す自動音声応答システムのこと。1日に数百〜数千以上もの電話に対応するコールセンターにとって、欠かせないシステムと言っても過言ではありません。
IVRがあるのとないのとでは、業務に対して感じる負荷の大きさが異なるでしょう。
本記事では、IVRとはどのようなシステムなのか深掘りして解説していきます。期待できる効果や導入するにあたってのポイントも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
この記事の内容
IVRとは電話の自動音声応答システムのこと
IVRとは、Interactive Voice Responseの略称であり、電話に対して自動音声で応答するシステムのこと。コールセンターではこのIVRが導入されるケースが一般的になりました。
電話をかけた時に「製品についての問い合わせは1を」「解約に関するご相談は2を」のように、問い合わせ内容に合わせて適切な担当者へとつなぐ案内役こそ、IVRを活用した自動振り分けになります。
これまではIVRがないと担当者が要望を聞き、本来のコーナーに電話をつなぐ必要がありました。しかし、現在はそういった手間はかかりません。
こうした進化は、AI(人工知能)の発達により実現しました。AIにより、顧客情報の管理や運用が自動でできるようになったのが大きな要因です。
なお、現在は音声だけでなく、スマートフォンの画面上に案内メニューが表示されるビジュアル式のIVRも登場しています。
IVRは3種類
IVRは、大きく3種類あります。
- オンプレミス型IVR
- クラウド型IVR
- ビジュアル型IVR
オンプレミス型IVR
オンプレミス型IVRは、企業が自社の施設内にシステムを設置し、運用するタイプのIVRです。
データセンターやオフィス内のサーバーに専用のハードウェアとソフトウェアをインストールして構築するため、自社で運用・管理ができ、必要に応じてカスタマイズできる特徴があります。
オンプレミス型IVRは、セキュリティとデータ管理の機能を有しますが、設置と保守に関連するコストやリソースがかかります。
クラウド型IVR
クラウド型IVRは、サービスを提供する会社のサーバーを使ってシステムを利用するIVRサービスです。
クラウド上に設置しているため、インターネットを経由すればどこからでもアクセスできます。企業は専用のハードウェアを購入せず、サブスクリプションベースの料金を支払います。
スケーリングが簡単で、サービスプロバイダーによるアップデートや保守が提供されるため、管理コストが軽減できます。
また、自社に合わせて柔軟に設定変更できるカスタマイズ性の高さもポイントです。
ビジュアル型IVR
ビジュアル型IVRは、従来の音声型IVRとは異なり、視覚的なインターフェースを使用して対話を提供するタイプのIVRです。
ユーザーは、テキストやSMS、メニュー、グラフィックスを介して対話できます。これにより、FAQサイトやチャットボットにも、ユーザーを容易に案内できるようになりました。
ビジュアル型は、顧客と何度もやり直す手間を省けます。
IVRの主な機能6つ
次に、IVRの主な6つの機能を紹介します。
- オペレーターを介さない問い合わせへの自動応答
- 問い合わせ内容による適切な振り分け
- 折り返し電話の予約
- オペレーター不在時の応対
- 自動発信・音声案内
- SMS送信
オペレーターを介さない問い合わせへの自動応答
IVRは、顧客からの電話や他のコミュニケーションからの問い合わせに対し、オペレーターによる応対を介さず自動応答する機能を有します。
顧客が特定の情報を求めたり、特定の操作を実行したりする際に、スムーズな案内や情報を提供します。これにより、顧客は必要な情報を迅速に取得できます。
問い合わせ内容による適切な振り分け
IVRは、問い合わせの内容や顧客の選択に応じて、適切な振り分けができます。
例えば、技術サポートやサービスの解約、カスタマーサービスなど、顧客が必要とするサービスへそれぞれ適切に振り分けられます。
これにより、顧客のニーズに迅速に対応でき、効率的な問題解決ができます。
折り返し電話の予約
IVRは、顧客からの電話に、折り返しの電話を予約できる機能を提供します。コールバック機能とも呼ばれています。
特に、問い合わせが多いコールセンターでは、顧客を長時間待たせてしまうケースもあるでしょう。
そこで、あらかじめ設定した時間が経過した顧客に対して、折り返しの予約へと案内できれば、不満を軽減させられます。
オペレーター不在時の応対
IVRは、オペレーターがいない、または対応が難しいときには、顧客からの問い合わせに自動的に応答します。24時間365日応対できます。
休日や営業時間外だけではなく、問い合わせで混雑しやすい時間でも顧客を待たせずに、案内やFAQの提供、問題の解決や情報を提供できるでしょう。
顧客の操作が短縮されるため、サービス品質の向上に期待できます。
自動発信・音声案内
IVRの機能には、自動的に顧客に電話をかける自動発信、音声案内の機能があります。着電の応対に加え、自動発信も行えます。
予約の確認や料金の支払いが遅れている方への支払いリマインダー、予定されたサービスの提供などに活用できます。
個別的に電話をかける必要がないため、効率的なコミュニケーションが実現され、スムーズな情報提供ができるでしょう。
SMS送信
IVRは、音声通話だけでなく、SMS(Short Message Service)の送信機能も提供します。
顧客にテキストメッセージを送信して重要な情報を伝えたり、認証コードを提供したりできます。SMSは、より迅速なコミュニケーションと安心な情報伝達を実現します。
これらのIVRの主な機能は、効率的なカスタマーサービスとコミュニケーションの向上に貢献します。
顧客満足度を高め、業務プロセスを効率化するために利用できるでしょう。
IVR導入による6つのメリット
IVRを取り入れることで得られるメリットは、大きく6つ挙げられます
- 顧客満足度の向上が期待できる
- 24時間365日対応で機会損失を防げる
- 応答率が向上する
- 顧客管理がしやすくなる
- 人的リソースを有効活用できる
- オペレーター不足の解消につながる
顧客満足度の向上が期待できる
IVRは、顧客の問い合わせや要望に迅速かつ正確に応答するためのツールとして、顧客満足度向上に期待できます。
オペレーターのスキルが不足している場合では、問題解決に時間がかかったり、問題解決に至らなかったりする場合があります。この状況では、面倒であると感じ不満を抱く場合もあるでしょう。
IVR導入による適切な案内により、顧客のストレスを軽減し、良い顧客体験を提供できます。
24時間365日対応で機会損失を防げる
IVRは自動応答機能を備えており、オフィスの営業時間外や休日でも問い合わせを受付けられます。
コールセンターにとっては、潜在的な顧客や重要な取引の機会を逃さず機会損失を防げます。
顧客にとっては、営業時間を気にせずに応対してもらえるため、ストレスを軽減できるでしょう。
応答率が向上する
IVRが顧客からの問い合わせを内容に合わせて振り分けるため、コールセンター業務を効率化できます。オペレーターのみの応対であれば、件数の上限があるため、応答率が低下します。
そのため、導入することで顧客の問い合わせにより多く、迅速に対応できます。応答率が向上すると、顧客満足度の向上につながるでしょう。
顧客管理がしやすくなる
IVRは顧客情報の収集や確認を効率的に行うため、顧客管理がしやすくなります。
顧客履歴や情報にアクセスし、個別の対応やカスタマイズされたサービスを提供できます。顧客ロイヤルティの向上に貢献できるでしょう。
人的リソースを有効活用できる
IVRは、簡単な問い合わせやルーチンタスクの処理を自動変換し、オペレーターの負担を軽減します。
より複雑な問題や高度なサポートに専念できるため、人的リソースを有効活用できるでしょう。
さらに、振り分けをする前提で担当者を決定できれば、事前にその分野の知識を深められます。経験が浅いオペレーターでも応対可能となり、全体の生産性向上につながります。
オペレーター不足の解消につながる
コールセンターでは、人手不足が課題となる場合が多いです。IVRの導入は、オペレーター不足の解消にも効果が期待できます。
自動応答により、多くの問い合わせを処理でき、コールセンター業務全体の負担を軽減します。これにより、オペレーターが高付加価値な業務に集中でき、サービス品質を維持できるのもメリットの一つです。
また、イレギュラーな応対を迫られる機会が少なくなるため、オペレーターのストレスを軽減でき、早期退職の防止につながるでしょう。
さらに、オペレーターの定着が顧客へのサービスの充実につながります。
IVR導入による2つのデメリット
一方、IVRの導入で懸念点とも言えるデメリットが2つあります。
- 顧客の手間が増加してストレスを感じる
- シナリオ不足ではオペレーターへの問い合わせが増加する
顧客の手間が増加してストレスを感じる
IVRは、自動応答を提供するシステムです。
一見、オペレーター側の負担は軽減されますが、顧客側は案内に従って番号の選択といった手間がかかります。複雑なメニューや長い音声案内が続くと、特に急いでいる顧客はストレスを感じるかもしれません。
つながった時の顧客の心情や態度に対して、細心の注意を払いながら対応する必要が出る可能性もあります。
案内を導入するにあたって、誰もが利用しやすくシンプルでスムーズに窓口へとつながるようにシステムを構築しましょう。
シナリオ不足ではオペレーターへの問い合わせが増加する
導入の際にシナリオが不十分である場合は、顧客が必要な情報やサポートを得るために苦労する可能性があります。
この結果、顧客は最終的にオペレーターへの問い合わせを選択し、自動応答が効果的に機能しないことがあります。導入により効果が十分得られません。かえって、オペレーターへの問い合わせが集中し、業務効率が悪化する可能性があるでしょう。
導入する前に、窓口までの導線を繰り返し検討し、自社の問い合わせに合ったシナリオを想定しなければなりません。
問い合わせの業務を円滑化するためにも、シナリオは70点ではなく100点近くにまで仕上げましょう。
IVRをコールセンターに導入する時のポイント6つ
では最後に、IVRをコールセンターに取り入れるにあたって、6つのポイントを紹介します。
- ガイダンスをできるだけ簡潔に設定する
- 担当オペレーターの役割を分担しておく
- 導入後も設定を定期的に見直す
- 初期費用とランニングコストが適切かを確認する
- 自社に必要な機能の有無を見る
- サポート体制の充実度合いを把握する
ガイダンスをできるだけ簡潔に設定する
IVRのガイダンスや音声案内は、顧客にとってわかりやすく、簡潔に設定することが重要です。
長すぎる案内や複雑なメニューは、顧客に不満を抱かせ、導入による効果を損ねる恐れがあります。
短いメッセージ、適切なキーワードを使用し、スムーズに案内できるようにしましょう。
担当オペレーターの役割を分担しておく
IVRを導入する際、オペレーターの役割を明確に分担することが必要です。
どの部分までをIVRが担当し、どの部分からオペレーターが担当するのかを定義しておきましょう。
これにより、オペレーターは高度なサポートに集中して取り組め、問題解決に専念できます。結果、オペレーターの業務効率化が期待できるでしょう。
導入後も設定を定期的に見直す
そして、事業の変化や顧客の要望に合わせて、IVRの設定を見直しましょう。最初に設定した内容が、いつまでも適切だとは限らないからです。
設定のズレがあれば、業務の効率化が図れないだけではなく、顧客満足度の低下につながりかねません。
新たなサービスやプロダクトの追加、顧客ニーズの変化などに対応するため、定期的に設定を見直してください。
定期的な見直しにより、顧客満足度を高められるでしょう。
初期費用とランニングコストが適切かを確認する
IVRの導入には、初期費用とランニングコストがかかります。これらの費用が予算内に収まるかを確認し、コスト対効果を評価しましょう。
必要な機能を活用しながらも、無駄なコストの削減が重要です。
自社に必要な機能の有無を見る
IVRの機能は多岐にわたります。さまざまな機能があり、製品によって異なります。
自社のニーズに合った機能が提供されているかどうかを確認しましょう。
例えば、顧客情報の管理や予約管理、自動発信などが必要か検討し、適切なシステムを導入してください。
サポート体制の充実度合いを把握する
IVRの導入後、トラブルシューティングや技術サポートが必要になる場合があります。
製品により、数多くのプランが用意されています。「トラブルが発生したときに親身にサポートしてくれるのか?」を判断し、プロバイダーのサポート体制が充実しているか確認しましょう。
トラブル発生時に迅速に効果的に対応できる製品を導入してください。
まとめ:IVRを導入して顧客満足度の向上につなげよう
IVRとは、「電話の自動音声応答システムのこと」です。
問い合わせへの自動応答や問い合わせ内容による適切な振りわけなど、さまざまな機能を有しています。IVR導入により、顧客満足度の向上が期待でき、顧客獲得の機会損失を防げるなどのメリットもあります。
しかし、導入時の検討が不十分であれば、自社が期待する効果が得られず、コストがかさむ可能性があります。
IVRは、十分に比較検討をしたうえで導入し、顧客満足度の向上につなげましょう。