コールセンターのオペレーターが、自分では対応できないケースを管理者に引き継ぐのがエスカレーションであり、業務の迅速な遂行に欠かせません。
トラブルを最小限におさえるための対策ですが、取り次ぎにかかる時間を顧客に待機させてしまうため、できれば避けたい方もいるでしょう。
では、どのようにすれば迅速なエスカレーションを実現でき、そもそも引き継ぐ手間を削減できるのでしょうか。
そこで本記事では、コールセンターでエスカレーションが起きる原因や問題点、対応のポイントなどを紹介します。
この記事の内容
エスカレーションフローとは
エスカレーションとは、オペレーターの経験不足や知識不足により自身では判断しきれない状況を上司に報告し指示を仰ぐこと。エスカレーションフローは、電話をどのような手順で、誰に取り次げばいいか可視化することです。
SBI証券におけるコールセンターのエスカレーション発生率では、新人オペレーターで0.6%、ベテランオペレーターで0.12%となっています。
参照:SBI証券|新人のエスカレーション率0.18% 一次解決率を向上した会話トレーニング
緊急性が伴うにもかかわらずエスカレーションを行わない場合は、トラブルに発展し企業の信用を損なう恐れがあるでしょう。また、オペレーター自身が責任を負い切れなければ、上司である管理者が責任を問われかねません。
企業の窓口となるコールセンターでは、エスカレーションフローが重要な意味を持ちます。
エスカレーションが起こる原因
それでは、エスカレーションが起こる原因について解説していきます。
- 重大なトラブルへ発展する恐れのある内容
- オペレーター側で判断できない内容の問い合わせ
重大なトラブルへ発展する恐れのある内容
重大なトラブルに発展する恐れがある内容は、エスカレーションを行い責任者に対応してもらう必要があります。
- 商品やサービスに不具合があり納得できない
- オペレーターの対応が悪いと感じた
例えば、クレームが発生した場合、オペレーターの対応では顧客が満足できないケースもあるでしょう。
オペレーターがエスカレーションを行わずに対応し続けた場合、顧客側のストレスが蓄積され、重大なトラブルに発展するかもしれません。
そこで、できるだけ早く解決に導くために、エスカレーションを行います。
オペレーター側で判断できない内容の問い合わせ
商品やサービスについての問い合わせで、オペレーター側での判断が難しい場合はエスカレーションが発生します。
この場合は、オペレーターの経験や知識不足が原因と考えられます。
顧客から責任者を電話に出すよう求められた場合も、エスカレーションは避けられません。
エスカレーションの発生で生じる問題点
続いて、エスカレーションが発生した場合に生じる問題点について解説します。
- 報告すべき案件かタイミングも含めて判断が難しい
- 特定の責任者に業務が集中する
- エスカレーションの情報共有に手間と時間がかかる
- 顧客満足度が低下する恐れがある
報告すべき案件かタイミングも含めて判断が難しい
まず、責任者に報告すべき案件なのか、タイミングも含めて判断が難しい点が挙げられます。
仮に、報告すべき内容であるにも関わらず、タイミングがわからないまま対応を続けてしまうと顧客満足度は低下しかねません。
特に経験が少ないオペレーターは、どのタイミングでエスカレーションを行えばいいか判断できないことが多いでしょう。
特定の責任者に業務が集中する
エスカレーションの発生では、特定の責任者に業務が集中する恐れがあります。
トラブルを未然に防ぐためとはいえ、特定の責任者に業務が集中すれば全てには対応しきれないでしょう。
対応しようとしても、他の案件に手間取り顧客を長い時間待たせれば、重大なトラブルに発展しかねません。
エスカレーションの情報共有に手間と時間がかかる
エスカレーションでは、責任者と情報を共有しなければなりません。その際に手間と時間がかかるのも懸念点の一つです。
オペレーターが上司に電話を取り次ぐ際は、通話内容や顧客の要望を一から伝える必要があります。
メモを取っても、しっかり内容が伝えられていなければ、オペレーターに聞き直すことになり時間が無駄になりかねません。
また、責任者が他の顧客に対応中というケースがあるでしょう。この場合は、対応先を探すのに時間と手間がかかります。
顧客満足度が低下する恐れがある
また、エスカレーションでは、顧客満足度が低下する恐れがあります。
オペレーターが正確なエスカレーションができない場合、その間顧客をまたせたままになります。長い間放置されたと感じれば、顧客は不満を抱くでしょう。
特にクレームの場合は、重大なトラブルに発展する恐れがあります。
エスカレーション対応を迅速に実施するポイント
では、エスカレーション対応を迅速に実施する4つのポイントを紹介します。
- エスカレーションフローを整備する
- 内容に応じてエスカレーション先のレベル分けをする
- 社内で情報共有しておく
- 定期的にルールを更新する
エスカレーションフローを整備する
はじめに、エスカレーションフローを整備しましょう。
オペレーターが迅速にエスカレーション対応を行わなければ、顧客満足度の低下につながります。
そこで、エスカレーションフロー図を作成し社内で共有すれば、オペレーター自身が判断し適切なエスカレーションが可能になります。
内容に応じてエスカレーション先のレベル分けをする
内容に応じてエスカレーション先をレベル分けするのも有効です。
エスカレーションが必要な場合でも、案件によって緊急性の高いものと低いものがあります。
緊急性が高い場合と低い場合で、エスカレーション先を区別しましょう。また、担当者が対応できない場合は、どこに取りつげばいいかも決めておくと安心です。
社内で情報共有しておく
コールセンターにおけるエスカレーションでは、社内で情報共有しておくことも大切です。
社内や各チーム内で情報が行き届いていれば、引き継ぎもスムーズに行えるでしょう。
シームレスなエスカレーションができれば、顧客の不満やストレスも緩和できます。
定期的にルールを更新する
定期的にルールを更新するのも重要です。
コールセンターには日々さまざまな内容の電話がかかってきます。エスカレーションフローを整備しても、想定外のことが起きることもあるでしょう。
その都度新たなルールを追加し、ルールを更新すればオペレーターも迅速に適切な対応ができます。常に最新の情報に更新しておきましょう。
エスカレーション対応の削減方法4選
そもそも、エスカレーション対応をする必要がなければ、より満足度の高いサポートや対応が行えます。
では、どうすればエスカレーション対応を削減できるのでしょうか。
最後に、エスカレーション対応の削減につながる4つの方法を紹介します。
- オペレーター教育を徹底する
- マニュアルや社内FAQを整備する
- オペレーターの対応範囲を拡大する
- CTIなどの業務システムを活用する
オペレーター教育を徹底する
まずは、オペレーター教育を徹底させましょう。
オペレーター教育でスタッフを育成すれば、誰でも状況に応じた柔軟な対応ができるようになります。
すると、エスカレーションが必要なケースが減り、多くの場面を1人で完結させられるでしょう。
マニュアルや社内FAQを整備する
マニュアルや社内FAQを整備することも大切です。
オペレーターが対応に困ったとき、マニュアルを参考にすれば対応できることもあるでしょう。
コールセンターに寄せられる問い合わせで多い内容は、よくある質問として掲載すれば、電話する必要がなくなり、エスカレーションの削減にもつながります。
オペレーターの対応範囲を拡大する
オペレーターの対応範囲を拡大するのも有効です。
例えば、オペレーターの裁量で値引き交渉に対応できるようにしておけば、エスカレーションの削減につながります。
そのためには交渉術が必要になるため、オペレーター教育が欠かせません。
オペレーターの対応範囲が広がれば、モチベーションがアップし生産性向上効果も期待できます。
CTIなどの業務システムを活用する
CTIなどの業務システムを活用することも有効です。
CTIシステム(電話とコンピュータを統合させる)は、通話内容を記録できるので、過去に発生したエスカレーションデータの蓄積が可能です。
CRMシステム(顧客管理システム)は、顧客の問い合わせ履歴を保存しておけます。
通話内容をテキスト化する音声認識サービスは、過去の事例をまとめられるのでマニュアル作成に役立てられるでしょう。
まとめ:コールセンターのエスカレーション対応を見直して顧客満足度向上につなげよう
コールセンターにおけるエスカレーションは、トラブルを未然に防ぐために欠かせません。
とはいえ、エスカレーション対応を減らすための、人材育成も進めていく必要があります。
本記事で紹介した、エスカレーションを迅速に実施する方法や、削減方法を参考に顧客満足度向上につなげてください。