コールセンターの分析手法3つ!KPI指標や7つの重要ポイントも解説

コールセンターの主な仕事は、電話を通じて顧客に商品やサービスを紹介し、受注につなげることです。

購入に結びつけるためには「顧客と対話してダメだったらなんとなく次に臨む」だけでは成果にはつながりません。

そこで大切なのが「データ分析」です。

「何がいけなかったのか」「購入に踏み切れない原因は何か」を分析すれば、徐々に流れや応対品質の改善につなげられます。

本記事では、コールセンターのデータ分析で使われる手法重要ポイントを詳しく紹介します。分析ツールKPI指標(目標の達成度合いを可視化して示す指標)も解説しますので、ぜひ参考にしてください。

コールセンターのデータ分析をする重要性

はじめに、コールセンターのデータ分析をする重要性を解説します。

  1. 商品やサービスの品質向上
  2. 対応の品質向上・標準化

商品やサービスの品質向上

コールセンターへ寄せられた声を分析することにより、商品やサービスの品質向上につながります。

時には、顧客から商品やサービスに対する要望やクレームを受けることもあるでしょう。

しかし、要望やクレームには、問題点を改善するためのヒントが隠されています。

顧客の声をもとに問題点を改善できれば、商品やサービスの品質向上を実現でき、結果的に売上げアップも期待できます。

対応の品質向上・標準化

顧客とオペレーターの通話内容を分析すれば、対応の品質向上・標準化も実現できます。

一般的に、コールセンターでは顧客とオペレーターの通話をすべて録音しています。

通話内容の録音を聴き直せば、問い合わせへの回答内容や言葉遣い、トークの聞き取りやすさなどを振り返れます。

良い通話内容はモデルとし、改善が必要な通話内容も反省点とともに全体共有することで、対応の品質向上・標準化につながるでしょう。

コールセンターのデータ分析に欠かせないKPI指標

KPI(Key Performance Indicators)とは、目標の達成度合いを示す指標です。

コールセンターのデータ分析に欠かせないKPI指標は、以下の4つに分類できます。

  1. 応対品質
  2. 顧客満足度
  3. 生産性・効率性
  4. マネジメント

応対品質

応対品質とは、電話のつながりやすさや対応の質を計測するKPIです。

応対品質の具体的な指標は、大きく4つあります。

応答率 着信の数に対して応答された割合。
例:500本の着信に対し20本に応答した場合、応答率は4%。目安として90%を維持するのが理想。
放棄呼率 着信の数に対してつながる前に電話を切ってしまった割合。
100%から応答率を引けば算出可能。
SL(サービスレベル) 一定時間内にオペレーターが応答できたコールの割合。
例:70%の割合で20秒以内に応答できた場合は「70/20」と記載。
ASA(平均応答速度) 着信があってから電話がつながるまでに要した時間の平均値。

応答率とSLは別な指標ではあるものの、オペレーターの数の見直しやシステム導入の検討などの対策が必要になる点は共通しています。

また、SLだけでは「どれくらいの時間、顧客をお待たせしたのか」までは把握できないため、応答品質を測る際はASAも重要な指標となります。

顧客満足度

顧客満足度(Customer Satisfaction)は、コールセンターに対する顧客の満足度を測るKPIです。略してCSとも呼ばれます。

顧客満足度を測るKPIには「NPS(正味推奨者比率)」があります。NPSとは、顧客が「自社の商品やサービスを他の人にもおすすめしたいと思っているか」を測る指標です。

NPSを測る際は、「あなたはこの商品を友人に勧めたいと思いますか」という質問項目を用意します。
そして、集計時には10段階評価の点数によって顧客を「批判者」「中立者」「推奨者」に分類するのが一般的です。

批判者 1〜6点
中立者 7〜8点
推奨者 9〜10点

最終的には「推奨者数-批判者数」をアンケート回答者数で割った数がNPSになり、その値が高いほど顧客満足度も高いことになります。

生産性・効率性

生産性・効率性は、業務を効率よく実施できているかを評価するKPIで、主に「稼働率」が利用されています。

また、「AHT(平均処理時間)」「ATT(平均通話時間)」「ACW(後処理時間)」という指標もあります。

稼働率 勤務時間に対する顧客対応にかけた時間の割合。
稼働時間中にずっと顧客対応をしている状態が続けば疲労により業務効率が下がりやすいため、80〜85%に維持するのが理想。
AHT(平均処理時間) 1回の顧客対応にかかった時間の平均値。
数値が大きければ、1回の顧客対応に長い時間を費やしていることになり、応答率やSLの低下にもつながる。
ATT(平均通話時間) 1回の顧客対応における通話時間の平均値。
コールセンター業務の遂行にかかる時間としてもっとも大きな割合を占める。
ACW(後処理時間) 1回の顧客対応に対する後処理に要した時間の平均値。
通話内容や顧客情報などのデータを入力する作業に費やした時間が該当する。

顧客対応には通話と後処理が含まれるため、「AHT(平均処理時間)=ATT(平均通話時間)+ACW(後処理時間)」という式が成り立ちます。
AHTとATT、ACWはすべて「対応にかかる時間」を表すため、小さい値の方が理想的です。

マネジメント

マネジメントとは、オペレーターの管理や職場環境の健全性を測定するKPIです。

実際に利用されるKPIには、「欠勤率」「離職率」があります。

欠勤率 本来出勤する時間に対する欠勤した時間の割合。
(遅刻や早退により働かなかった時間も含む)
離職率 一定期間内で離職した従業員の割合。

欠勤・離職は他のオペレーターの負担増大につながり、組織全体の生産性を下げかねません。

欠勤率・離職率が高い場合は、職場環境の改善やノルマの緩和なども視野に入れる必要があるでしょう。

コールセンターのデータ分析手法3つ

コールセンターのデータ分析手法は、主に以下の3つになります。

  1. KPI分析
  2. VOC分析
  3. 通話内容分析

KPI分析

1つ目は、KPI分析です。

コールセンターで用いられる主なKPIは、前述した通りです。

目標のKPIと現在のKPIを比較すれば、現在の立ち位置を把握でき、目標を達成するために何が必要かを導き出すのに役立てられます。

KPIを算出するうえで注意すべきことは、それだけで満足してしまうこと。KPIはあくまで目標でありゴールではありません。

設定したKPIと現状を比較し、なぜそのような数値になっているのかを検討して課題解決につなげられます

VOC分析

2つ目は、VOC(Voice of Customer)分析です。

VOC分析とは、顧客の声を分析してサービスの品質向上を行う手法のこと。分析の際は、録音した通話内容を再生・確認することで顧客の要望を詳細に把握していきます

そして最終的には、顧客のニーズを反映したマーケティング戦略立案へとつなげます。

通話内容分析

3つ目は、通話内容分析です。

通話内容分析とは、顧客とオペレーターの対話内容を分析する手法です。顧客との通話内容を分析すれば、オペレーター側の応対品質を確認でき、課題点も見つけられるでしょう。

分析の際に見るべきポイントは、大きく以下の3つです。

  • 正しい敬語を使えているか
  • 対話の流れは適切か
  • 顧客の質問にわかりやすく回答しているか

もしオペレーターの応対品質に問題があった場合は、マニュアルを改善することや研修を実施して解消しましょう。

コールセンターのデータ分析ツール6つ

続いて、コールセンターのデータ分析を行う際に使える6つのツールを紹介します。

  1. Excel
  2. KPI分析ツール
  3. VOC分析ツール
  4. コールセンターシステム
  5. テキストマイニングツール
  6. AIツール

Excel

まずは、表計算ツールのExcelです。

Excelは、データの整理や計算をする際に便利なツールです。入力した数値をグラフや表にすれば、結果を可視化しやすくなります。

日頃からExcelを扱っている場合は、新たなツールを導入する必要もありません。無料で利用できるので、コスト面でのメリットもあります。

KPI分析ツール

次に、KPI分析ツールを利用するのも方法です。

KPI分析ツールは、KPIを測定・分析する際に用いるツールです。

このツールを利用すれば、例えばコールセンターへの問い合わせ数や保留時間、平均対応時間などの数値データを簡単に収集できます。

VOC分析ツール

VOC分析ツールを利用するのも一つの方法です。

VOC分析ツールは、通話内容をリアルタイムで文字起こしする機能や自動要約する機能、ワンクリックで上司に助けを求められる機能などがあります。

お客様の声を一つひとつ確認するのは手間が掛かるでしょう。

しかし、VOC分析ツールを利用すれば効率的にお客様の声を分析できるので、迅速な課題解決にもつながります。

コールセンターシステム

コールセンターシステムを使うのも方法です。

コールセンターシステムとは、通話内容の録音機能や情報管理機能など、コールセンターの業務に必要な機能を備えたツールです。

オペレーターの稼働状況や平均処理時間などの蓄積や解析もできるので、一通りのKPIを把握するのに適しています。

コールセンターシステムのおすすめ15選を比較!最大限活用する選び方も紹介

テキストマイニングツール

テキストマイニングツールは、問い合わせ履歴やアンケート、社内日報などの大量のテキストを分析し、目的に応じた情報を抽出できるツールです。

自動的に大量のテキストデータから有益な情報を抽出し、結果を可視化できます。

コールセンターでは、チャットボットなどに入力された内容を分析する用途でも活用できるでしょう。

さまざまな企業が、テキストマイニングツールを利用してアンケートやSNSの投稿内容を分析し、サービスの品質向上につなげています。

AIツール

AI(人工知能)ツールを活用するのも方法です。

現在、幅広い分野でAIが利用されていますが、コールセンターのデータ分析ツールでは感情解析など高度な機能が搭載されているものもあります。

感情解析機能は、顧客の抑揚や声色などを基に感情を予測して通知するものです。顧客の不快感が強くなったときに、すぐ上司に対応を代行してもらうなども行えるでしょう。

また、オペレーター側の感情分析も実施できるので、業務ストレスの度合いも確認できます。

離職率の高いコールセンターは、それ以上に退職者を出さないためにオペレーターのメンタルヘルスに努めることも大切です。

どのようなときにオペレーターがストレスを感じるのかを把握できれば、日頃から適切な声掛けをすることもできるでしょう。

コールセンターのデータ分析をするメリット3つ

ここでは、コールセンターのデータ分析をするメリット3つを紹介します。

  1. 組織全体の生産性向上につながる
  2. 顧客の属性を把握できる
  3. オペレーターの対応品質を適切に評価できる

組織全体の生産性向上につながる

まず、組織全体の生産性向上につながります。

コールセンターのさまざまなデータを分析すれば、改善すべき点が見える状態になります。そして、改善を積み重ねていけば、着実に生産性も上がっていきます。

反対に、データ分析を行わなければ、目の前の業務をその場でこなすだけになりかねません。いつまでも組織全体の生産性は上がらず、顧客満足度の向上も見込めないでしょう。

顧客の属性を把握できる

顧客の属性も把握できます。

コールセンターには、顧客の個人情報や通話時間、通話内容といった多くのデータが蓄積されています。

これらのデータを詳しく見ていけば、顧客の属性ごとにどのような傾向があるかも判明するでしょう。

例えば、「美容製品Aについての問い合わせは20代女性の層が多い」ことが分かったとしましょう。

そこで、20代の女性層に人気のYouTubeやTikTokでの動画コンテンツや記事コンテンツを充実させるといった施策も実施できるでしょう。

このように属性と傾向がわかれば、商品やサービスの改善につなげられ、顧客満足度を向上させられます。

オペレーターの対応品質を適切に評価できる

オペレーターの対応品質を適切に評価できるのもメリットです。

対応品質は、「応答率」「放棄呼率」「SL(サービスレベル)」「ASA(平均応答速度)」などのKPIで数値化できます。

感覚的にオペレーターの対応品質を見てしまった場合、人によっても評価が分かれてしまうでしょう。

例えば、上司Aが「ほとんどのコールに対応できているので概ね問題ない」と言っても、上司Bは「対応できてないコールがある時点で応対品質は悪い」と反論があるかもしれません。

そうした曖昧な観点も、数値で客観的かつ適切な評価を行えるので、納得感のある結果が得られます。

コールセンターのデータ分析で重要なポイント7つ

では最後に、コールセンターのデータ分析で重要な7つのポイントを紹介します。

  1. データ分析の目的を明確にする
  2. 仮説を立てる
  3. 正確なデータを利用する
  4. データをグラフ化する
  5. データの計測期間を適切に設定する
  6. データ間のバラつきも考慮する
  7. 総合的なKPIで判断する

データ分析の目的を明確にする

まず、データ分析の目的を明確にすることが重要です。

コールセンターにおいてデータ分析を行うのは重要ですが、なんとなく実施しても意味がありません。「他のコールセンターがしているから」という理由だけで実施するのは、確認しても何も得られないでしょう。

例えば「現在の顧客満足度を把握したい」「コールセンターの応対品質を確認しておきたい」のように、何のためにデータ分析をするのかを意識してから着手してください。

仮説を立てる

仮説を立てるのも欠かせないポイントです。

膨大なデータをやみくもに分析したとしても、結局のところは何も見えてきません。

そのため、正誤は別として一度仮説を立ててしまうのがデータ分析の最短ルートになります。

例えば、「最近、顧客を怒らせてしまうことが増えている」という課題を抱えているとしましょう。

そこで「オペレーターの案内時に不手際があったのかもしれない」という仮説を立てれば、通話分析が有効であるとわかります。

通話分析を通じて、顧客を不快にさせた言動を抽出できれば、すぐに改善ができます。

もし最初に立てた仮説が間違っていた際は、次の仮説を立てて検証を続けましょう課題解決をする際は、仮説を立てて検証を繰り返すことが有効です。

正確なデータを利用する

データ分析の際は、正確なデータを利用しましょう。

正確でないデータを分析に用いても、当然正しい結果は得られません。的確な改善にも結びつかないでしょう。

正確なデータを収集するには、手動でなくできるだけコールセンターシステムのような自動ツールを活用してください。

データをグラフ化する

データをグラフ化するのも重要です。

ただ数値が羅列した状態では、傾向やポイントは掴めません。収集したデータから見える結果を誰もがわかりやすい状態にするには、グラフ化が有効です。

過去のデータ分析結果を遡って確認するときも、グラフ化されていればすぐにデータの傾向がわかります。

データの計測期間を適切に設定する

データの計測期間を適切に設定することも大切です。

計測期間は、最低でも3ヶ月程度をみておくと良いでしょう。分析の際は、長期的に収集したデータを利用することで精度の高い結果が得られます。

一方、データの計測期間が短かければ、そのデータから見える結果が一過性のものに過ぎないのか汎用性があるものかの判断がつきません。

データ分析を初めて行う場合も、ある程度の期間を確保して収集をしましょう。

データ間のバラつきも考慮する

分析の際は、データ間のバラつきも考慮しなければなりません。

サービス品質が高いコールセンターは、どのスタッフが担当しても一定の基準をクリアしています品質の低いサービスだと、属人性が高く、標準化できていません。

例えば、ASA(平均応答速度)の結果が10秒だったとしましょう。平均値だけで見ると良い部類に入ると見えるかもしれません。

しかし、Aさんは10秒でBさんは5秒、Cさんは15秒とバラつきがあれば、Cさんにあたった顧客の満足度を著しく下げるでしょう。

こうしたバラつきはできる限り、解消しなければいけません。

このように、データのバラつきまで考慮すると、返答時間に課題のあるオペレーターを発見でき、的確な改善施策でより課題解決につながるでしょう。

総合的なKPIで判断する

総合的なKPIで判断することも大切です。

1つのKPIだけに着目するのではなく、複数のKPIから結果を分析しましょう。

例えば、現在の応答率は90%を維持できているとします。

しかし、離職率が高まっている場合、現在在籍しているオペレーターに負担がかかり続けるので、今後は応対品質が落ちていくリスクを否定できません

この場合は、なるべく早い段階で離職を食い止めることオペレーターの増員を検討することなどの対策も必要になるでしょう。

良い数値が出ているKPIばかりに着目して満足することは簡単ですが、それだけでは組織全体に良い結果をもたらすことは難しくなります。

1つの指標だけに捉われず、複数のKPIを俯瞰して総合的に分析して評価をしましょう。

まとめ:コールセンターのデータ分析で応対品質や生産性向上を図ろう

コールセンターのデータ分析は、仕事の一環とも言えるほど大切な作業です。

応対品質や生産性の向上を図るために、データ分析は欠かせません。

これからデータ分析を始めるうえで、まずはデータの収集を開始し、データ分析ができる環境を整えていきましょう。

本記事の内容を参考にしつつ、コールセンターサービスの改善に向けたデータ分析を実施してください。